鉄 / Iron
  釉薬の着色剤として最も多く用いられるのが鉄であろう。酸化焼成の場合、少量を加えると黄瀬戸に代表されるように淡い黄色になり、さらに加えていくと褐色、茶褐色、黒へと変化する。一方還元焼成では青磁に見られるような淡い青から褐色、茶褐色、黒へと変化する。

 釉薬には鉄分を含んだ天然の石や土(含鉄土石)を用いる場合と、それらから人工的に鉄分を取り出したものを持ついる場合がある。天然のものとして、鬼板は30-50%程度の鉄分を含む褐鉄鉱の一種で、岩石から流れ出した鉄分がまわりの土とともに固まったものである。釉薬の材料としてのほか、鉄絵の具としても用いられる。中国黄土に代表される黄土は5-20%の鉄分を含む土で、風化・堆積して生まれたために粒子が細かい。釉薬のほか、土に混ぜて用いられることもある。芦沼土、益子赤土とも呼ばれる益子赤粉は6%程度の鉄分と、珪酸分およびわずかな燐酸分を含み、単身で柿釉として用いられるほか、さらに鉄分を加えると黒釉になる。似たような性質を持つ来待石は柿釉としてのほか、釉薬の材料としても用いられる。赤ラクは鉄分を一割程度含むほか、長石、カオリンなどを含み、釉薬の材料として、また織部の下絵として用いられる。加茂川石粉は一割弱の鉄分のほか、マンガンや珪酸分を含み、白玉とともに黒楽の材料として用いられる。

 弁柄は天然の赤鉄鉱で、酸化鉄あるいは酸化第二鉄からなり、鉄分は90%以上と高い。釉薬のほか、鉄絵の具としても用いられる。黒浜はいわゆる砂鉄で、八割前後の鉄分を含み、やはり釉薬や鉄絵の具に用いられる。珪酸鉄は酸化鉄に対して三倍の珪酸を加えたもので、特に青磁釉に用いられることが多い。

銅 / Copper
  鉄についで多く用いられるのが銅で、酸化ではトルコ釉のような青から織部釉のような緑に、還元では辰砂釉のような鮮やかな赤に発色する。最もよく用いられるのが酸化銅で、織部釉などに用いられる。炭酸銅はやや粒子が細かく、辰砂釉に適している。硫酸銅は水に溶けやすいため、釉薬としてよりも黄瀬戸の丹礬に用いられる。炭酸銅と硫酸銅は毒物・劇物にあたり取り扱いには注意が必要。
コバルト / Cobalt
  コバルトは発色効果がとても強く、1%以下を加えたでも鮮やかな青色になる。釉薬に用いるほか、コバルトは染付けの呉須に欠かせないもので、その他に鉄やクロム、マンガン、珪素などを含んでいる。
マンガン / Manganese
  マンガンは茶色から黒の色彩を生み出すもので、二酸化マンガンや炭酸マンガンが用いられる。
酸化クロム / Chromic Oxide
  酸化クロムは緑色の着色剤として用いられるが、調合や焼成によって赤やオレンジ、褐色、黒などにも発色し、酸化錫とともに用いると赤やピンクになる。
酸化錫 / Tin Oxide
  酸化錫は乳濁釉の材料として用いられるほか、辰砂釉の赤い発色を助ける効果がある。また酸化クロムとともに用いると赤やピンクになる。
酸化ニッケル / Nickel Oxide
  酸化ニッケルは灰色や青、赤紫、ひわ色などに発色する。
酸化アンチモン / Antimony Oxide
  黄色やオレンジ色の顔料に用いられる酸化アンチモンは、低温の鉛釉に加えると黄色になり、無縁釉では白い乳濁釉になる。